2019年度のセミナー



第186回解析セミナー
日時 1月25日(土) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 白川 健 (千葉大)
題目 Kobayashi--Warren--Carter 型システムに対する数学解析
要旨
本講演では、Kobayashi--Warren--Carter 型として知られる放物型境界値問題のシステムを考える。このシステムは、[Kobayashi et al, Physica D, 140, 141--150 (2000)] において提案された結晶粒界運動のフェーズ・フィールドモデルに基づいている。 講演の前半部では、Kobayashi et al によるオリジナルの数学モデルとその発展版のシステムをいくつか取り上げ、解の存在を中心に、現在の数学解析で考察可能な話題について概説する。これに対し後半部では、解の一意性に代表される未解決領域の残された話題に移行し、空間1次元での研究の進捗を報告した上で、今後の課題について述べる。


第185回解析セミナー
日時 1月25日(土) 14:30〜16:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 今 隆助 (宮崎大)
題目 1回繁殖型Leslie行列モデルにおける分岐の問題
要旨
1回繁殖型Leslie行列モデルは,昆虫のように一生に一度だけ繁殖する生物の個体群動態を記述するn次元の差分方程式である. この方程式は,昆虫の周期的な大発生の仕組みを明らかにするために,Bulmer (1977) により研究された. 本講演では,この方程式から,巡回対称性をもつLotka-Voterra方程式が導出できることを紹介し,元の方程式の原点近傍における平衡点や周期点の分岐の問題が,巡回対称性をもつLotka-Voterra方程式の平衡点の安定性の問題に帰着することを示す. さらに,この方法により,Bulmer (1977) の結論を補完する結果が得られることを示す.


第184回解析セミナー
日時 12月14日(土) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 西畑 伸也氏 (東工大)
題目 Stationary waves for symmetric hyperbolic systems in half space
要旨
保存則型の非線形双曲型方程式系に対する半空間上での定常解の存在と安定性について講演します。 一般的な対称化可能な双曲型方程式系に対して定常解の存在を示し、さらに方程式系が安定性条件をみたせば定常解が漸近安定となること示します。 あわせて、こうした結果の応用として、離散型ボルツマン方程式や熱非平衡流の方程式等の物理モデルについて講じます。


第183回解析セミナー
日時 12月14日(土) 14:30〜16:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 加藤 圭一氏 (東京理科大)
題目 波束変換を用いたシュレーディンガー方程式の解の構成
要旨
シュレーディンガー方程式の解を具体的に構成する方法を与えることが目的である. ポテンシャルが時間に依存しない場合には様々な方法が適用可能であるが,ポテンシャルが 時間に依存する場合に解を構成する方法は多くない. 例えば,R. Feynmanのによる経路積分を数学的に定式化した藤原大輔氏の方法があり美しい理論であるが, 数値計算に適しているとは言えない.経路積分の方法はラグランジュ力学を基礎にしているからである. 本講演では,波束変換を用いたハミルトン力学を基にした解の構成法を紹介する.この方法は 波束変換とハミルトン方程式の解(常微分方程式の解)を用いるので,数値計算に適していることが期待できる.


第182回解析セミナー
日時 12月7日(土) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 和田出 秀光氏 (金沢大)
題目 On the existence of maximizers for inhomogeneous Trudinger-Moser type inequalities on the whole space
要旨
We discuss the existence or non-existence of maximizers for Trudinger-Moser type inequalities of inhomogeneous type. Trudinger-Moser inequality was originally obtained by Trudinger and Moser in bounded domains as the limiting case of Sobolev embeddings. After that, several authors succeeded in extending the inequality to unbounded domains. Especially, Ruf (2005) and Li-Ruf (2008) established inhomogeneous Trudinger-Moser type inequalities in the whole space with best constants. In this talk,we will consider the existence and non-existence of these type inequalities. The difficulties come from a lack of compactness of the corresponding functional due to concentrating and vanishing phenomena. We shall give sufficient conditions on the exponents appearing in the inequality so that its maximizers exist or not. This is a joint work with Professor Norihisa Ikoma in Keio University and Professor Michinori Ishiwata in Osaka University.


第181回解析セミナー
日時 12月7日(土) 14:30〜16:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 勝呂 剛志氏 (東北大)
題目 Rényi エントロピーに対する Shannon の不等式と不確定性原理
要旨
Shannon の不等式は, あるモーメントの条件における確率密度函数のエントロピー最大化問題から得られる不等式である. ここでは, Boltzmann や Shannon によって導入されたエントロピーの1パラメータ拡張である Rényi エントロピーに対する Shannon の不等式を導出する. さらに, 発展方程式や確率論における基本不等式の一つである対数型 Sobolev の不等式との関係に着目し, その応用として得られた, Heisenberg の不確定性原理の拡張不等式を紹介する. また, 時間があれば, これらの函数不等式の準線形移流拡散方程式への応用に触れる.


第180回解析セミナー(愛媛大学談話会との共催)
日時 10月18日(金) 16:30〜17:30
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 川本 昌紀氏 (愛媛大学)
題目 時間周期磁場中のシュレーディンガー方程式について
要旨
本講演では時間周期磁場中の線型シュレーディンガー方程式を考察する。この系における古典軌道はヒルの方程式によって記述され、ヒルの方程式の決定指数により、大きく分けて3つの物理状態に分類させる。本講演では、この3つの状態がそれぞれ
(I) 自由シュレーディンガー方程式
(II) 調和振動子付きシュレーディンガー方程式
(III) “ Repulsive “ なポテンシャルを持ったシュレーディンガー方程式
で特徴づけられる事を証明する。また時間が許せば、(III) の場合におけるスペクトル・散乱理論について得られた結果を紹介する。


第179回解析セミナー
日時 8月6日(土) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 若杉 勇太氏 (愛媛大学)
題目 空間変数に依存する摩擦項をもつ波動方程式の解の漸近挙動について
要旨
「空間変数に依存する摩擦項をもつ波動方程式の外部領域における初期値境界値問題に対し,解のエネルギー評価および漸近形について考察する. このような問題に対しては,Fourier変換による解表示などができないため,エネルギー法(部分積分)を用いて解の挙動を調べることが基本となる. Ikehata(2005), Todorova--Yordanov(2009), Nishihara(2010)により,指数関数型の重み関数を用いたエネルギー法が導入され,解のほぼ最良なエネルギー評価が与えられた. しかし,この手法は初期値に対しコンパクト台または空間遠方での指数的減衰という強い仮定を必要とする. 本講演では,対応する熱方程式の自己相似解で空間遠方において多項式オーダーで減衰するものを構成し,これを重み関数として用いる方法について紹介する. これにより,空間遠方で緩やかに減衰する初期値に対し,初期値の減衰度に応じたエネルギー評価が得られる. さらに,エネルギー評価の応用として,解が時間無限大において対応する熱方程式の解に漸近すること(拡散現象)を示す. 本講演は側島基宏氏(東京理科大学)との共同研究に基づく.」


第178回解析セミナー
日時 7月27日(土) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 中西 賢次氏(京都大学数理解析研究所)
題目 Trudinger-Moser 不等式の最大化問題の臨界非線形項
要旨
この講演は Ibrahim, Masmoudi, Sani との共同研究 (arXiv:1902.00958) に基く。 Trudinger-Moser 不等式は、L∞空間への臨界 Sobolev 埋蔵が破綻する場合において指数関数型積分の有界性を与えるもので、最良の非線形増大度での不等式は Moser (1971) により、その最良定数を達成する最大化元の存在は Carleson-Chang (1986) によって示された。 但しこれらは有界領域の場合であり、全平面ではその非線形項を冪で割った増大度が最良になることが Ibrahim-Masmoudi-Nakanishi [IMN2015] により示されたが、その場合に最良定数が達成されるか否かは未解決だった。 本講演では全平面と円盤の場合について、最大化元の存在・非存在の境界となる臨界増大度を漸近展開で求める。 その帰結として [IMN2015] の非線形項も最大化元を持つと分かるが、Moser の場合よりも臨界増大度からのズレが小さいため、その判定には展開が第3項まで必要になる。 展開の係数は、第3項に Apery の定数 ζ(3) を含む以外は単純な有理数で書ける。 証明では、エネルギー等分割で最大化問題を2つに分けてコンパクト性を回復し、非線形積分は対数座標でのソリトンで近似し、展開第3項にはソリトン周りの線形化を用いる。


第177回解析セミナー
日時 7月27日(土) 14:30〜16:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 眞崎 聡氏(大阪大学)
題目 2次元2次非線形項クラインゴルドン方程式における修正散乱問題
要旨
本講演では、ゲージ不変な2次非線形をもつ非線型クラインゴルドン方程式を空間2次元で考察する。 ここでは、解の時刻無限大付近での漸近挙動に興味がある。目標は、対応する線形解にlog 型の位相の修正が加わるという、いわゆる修正散乱型の漸近挙動を示す解の存在を示すことである。 他の方程式の結果からの類推により、この種の挙動を示す解が存在することは期待されていたものの、空間2次元においては、臨界非線形項が多項式ではなくなるという難しさがある。実数解の枠組みでは、眞崎-瀬片[Trans AMS, 2018]でその存在が初めて示された。 今回は、この結果からさらに一歩踏み込み、複素数値解を考察する。実数値解の場合は虚部が消えるという条件がある種の制約条件として働くが、複素数値解の場合はその制約がなくなるため状況がより複雑になる。解析の鍵となるのは、フーリエ級数展開のテクニックを用いて、非線形項の共鳴部分を特定する部分である。 なお、本講演は瀬片純市氏(九州大)、瓜屋航太氏(岡山理大)との共同研究に基づく。


第176回解析セミナー
日時 6月18日(火) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 猪奥 倫左氏(愛媛大学)
題目 Attainability of the best Sobolev constant in a ball
要旨
Sobolevの不等式とその最良定数は,偏微分方程式の定性的,定量的研究で本質的な役割を果たすだけでなく, 等周不等式といった幾何的な問題と密接に関連するため,多分野に渡って盛んに研究されている.特に最良定数の達成可能性について,全空間上ではAubin-Talenti関数によって達成されるが,有界領域上では達成されないことが知られている.本講演では,ball上で非線形スケール不変性を持つSobolev型不等式を導出し,この不等式はball上でも最良定数が達成されることを説明する.さらに,既存のSobolevの不等式との関係についても述べる.


第175回解析セミナー
日時 5月17日(金) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 清水 翔之氏(神戸大学)
題目 非線形シュレーディンガー方程式系の特殊解とその漸近挙動
要旨
非線形光学を起源とする、非線形項の結合定数が複素数値をとるシュレーディンガー方程式系を考える。この講演では、初期値をデルタ関数とした場合のあるクラスの特殊解が非線形項の冪が一致する場合には陽に解く事が出来(富山県立大学の土井一幸氏との共同研究)、異なる場合においても大域解や爆発解の漸近挙動を詳細に知る事が出来る事を述べる(熊本大学の北直泰氏との共同研究)。合わせて、両者のケースの解の挙動及び解析手法の違いについても触れる。


第174回解析セミナー
日時 4月19日(金) 16:30〜18:00
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 森岡 悠氏(愛媛大学)
題目 1次元2状態量子ウォークの一般化固有関数について
要旨
近年, 量子ウォークの定常測度の研究において, \(\ell^2\)空間に属さない状態についての解析が盛んに行われている. 物理的にも, レーザー装置を用いて\(\ell^{\infty}\)に属する状態と解釈するのが適当と思われる事例が構成されたようである. 定常測度の構成法の一つとして, \(\ell^{\infty}\)空間において時間発展作用素の一般化固有関数を求めることが考えられる. 本講演では, ユニタリ作用素に対するスペクトル散乱理論を用いた時間発展作用素の一般化固有関数の構成について紹介したい.


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