2014年度のセミナー

第129回解析セミナー
日時 1月 24日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 一ノ瀬弥氏(信州大)
題目 On the Feynman path integral for the Dirac equation
要旨
この講演では、Dirac方程式に対する経路積分を、Lagrangianを用いた単純な形 で、数学的に定義出来ることを示す。 Feynman-Hibbs (1965)の本のセクション2.6で、FeynmanとHibbsは、「Dirac方程 式に対する経路積分を単純な形で表すことは不可能であろう」と述べている。 従って、ノーベル賞をとった量子電磁気学に関する一連の3論文 Physical Review, Vol.76, p. 749 (1949), 同Vol.76, p. 769 (1949), 同, Vol.80, p. 440 (1950)においても、Dirac方程式に対する経路積分は現れない。 Schroedinger方程式に対する経路積分が現れるのみである。 講演者は、Commun. Math. Phys. Vol. 329, p. 483-508 (2014)で、Dirac方程式 に対する経路積分を初めて与えた。この講演では、前結果の拡張を与える。即 ち、同時刻に可算個の電子を考えることが出来ることを示す。 講演では、非専門家の方も理解出来るように、経路積分の基本的な考え方、即ち 波の干渉の問題から始める。証明も、細部には立ち入らないで、概略のみを述べる。


第128回解析セミナー
日時 1月 24日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 楳田登美男氏(兵庫県立大)
題目 The Dirac-Hardy and Dirac-Sobolev inequality in $L^1$
要旨
ソボレフ不等式のナブラを自由ディラック作用素(質量項なし)に 置き換えた不等式(ディラック-ソボレフ不等式)が$L^p$空間で 成り立つか、と言う問題に対して、一瀬&斉藤(2010)は $p>1$ならば成り立つことを示しました。本講演では$p=1$の場合、 ディラック-ソボレフ不等式が成り立たたないこと、しかし、 弱い意味のディラック-ソボレフ不等式は成り立つこと、を示します。 同じ発想で、ハーディ不等式についても論じます。以上の 考察で、磁場付きディラック作用素のゼロ・モードが重要な 役割を果たします。


第127回解析セミナー
日時 12月6日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 鈴木龍一氏(国士舘大)
題目 準線形放物型方程式系の解の爆発について
要旨
熱源をもつ準線形放物型方程式系の初期値問題の非負解について考える。 本講演では次の事が成り立つような熱源に対する条件をそれぞれ与える。 (I) 初期値を十分大きくした時に解がいつでも有限時間で爆発するような熱源に 対する条件 (II) 非自明解がいつでも有限時間で爆発するような熱源に対する条件


第126回解析セミナー
日時 12月6日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 中澤秀夫氏(日本医大)
題目 摩擦項を伴う波動方程式の定常問題に対する一様リゾルベント評価とその応用
要旨
2次元外部領域において摩擦項を伴う波動方程式の定常問題を考察し、重み関数の双対性が保持された形で一様リゾルベント評価式を導く。時間が許せば極限振幅の原理への応用にも触れる。


第125回解析セミナー
日時 11月28日(金) 16:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 岩本 幸治 氏(愛媛大学理工学研究科)
題目 流体工学における数値実験
要旨
曲がり管内流れの数値シミュレーションを例題に流体工学で行われる数値実験の現 状,特に後処理で流体工学者が何を得たがっているのかを紹介する. また,スペクトル法,有限差分法,有限体積法,境界要素法,渦法,粒子法などのよ く用いられている数値解法を紹介し,それぞれで用いられている物理モデルについて 説明する.


第124回解析セミナー
日時 11月28日(金) 15:00〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 野村 信福 氏(愛媛大学理工学研究科)
題目 状態量と完全微分について
要旨
状態量は熱力学ではじめて意識する概念である。圧力、体積、温度、内部エネ ルギーなどの状態量では、その微小量dP、dV 、dT 、dUを状態1から状態2まで積 分すれば、必ず一定の値P2-P1、V2-V1、T2-T1、U2-U1が得られるが、熱量Qや仕 事Wは状態量ではないので、全微分形で表記することはできない。工学分野で は,扱っている変数が状態量であるかどうかを意識しておく必要がある。ここで は工学的に利用される様々な変数がどのように数式で表記されているのかを紹介 し,その絶妙な技法と状態量の本質を探る。


第123回解析セミナー
日時 10月31日(金) 16:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 猪奥 倫左 氏(愛媛大学)
題目 半線形熱方程式の解の存在, 非存在, 一意性について
要旨
冪乗型の非線形項を持つ半線形熱方程式に対する解の存在・非存在および一意性は, 初期値の可積分性によって分類が行われ, Weisslerによって存在性の臨界値が,Brezis-Cazenaveによって一意性の臨界値が与えられた. 本講演では, 二次元空間において初期値が二重に臨界条件を満たす場合は, 先行研究の枠組み(Lebesgue空間)にて考察できない事を概説し, 指数可積分性を満たす空間を設定することで解の存在, 非存在, 一意性について議論する. 本講演はB. Ruf氏(Milano Univ.)およびE. Terraneo氏(Milano Univ.)との共同研究に基づく.


第122回解析セミナー
日時 7月18日(金) 16:00〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 谷口 雅治 氏(岡山大学)
題目 Convex compact sets in $\mathbb{R}^{N-1}$ give traveling fronts of cooperation-diffusion systems in $\mathbb{R}^{N}$
要旨
This work studies traveling fronts to cooperation-diffusion systems in $\mathbb{R}^{N}$ for $N\geq 3$. We consider $(N-2)$-dimensional smooth surfaces as boundaries of strictly convex compact sets in $\mathbb{R}^{N-1}$, and define an equivalence relation between them. We prove that there exists a traveling front associated with a given surface and that it is asymptotically stable for given initial perturbation. The associated traveling fronts coincide up to phase transition if and only if the given surfaces satisfy the equivalence relation.


第121回解析セミナー
日時 7月11日(金) 16:00〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 沖田 匡聡 氏(九州大学)
題目 圧縮性Navier-Stokes方程式の臨界空間における減衰評価
要旨
本講演では全空間における圧縮性Navier-Stokes方程式の臨界Besov空間における解の減衰評価について考察する。空間次元nがn≧2の場合に密度と流速の初期摂動がそれぞれ$B^{frac{n}{2}}_{2,1}$と$B^{frac{n}{2}-1}_{2,1}$かつ$B_{1,infty}^0$上で十分小さいときの静止定常解へ収束オーダーについて講演する。Danchin'00により斉次臨界ベゾフ空間における大域解の存在が示され、Haspot'11により非斉次臨界ベゾフ空間上での局所解の存在が示されている。今回、非斉次臨界ベゾフ空間上での大域解の存在を示しと減衰評価を導出する。


第120回解析セミナー
日時 6月21日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 伊藤 健一 氏(神戸大学)
題目 Absence of $B_0^*$-eigenfunctions and LAP on manifold with ends
要旨
体積の増大するエンドを持つ多様体上で,Laplace - Beltrami作用素(より一般にはSchr\"oindger作用素)の固有関数に対する遠方での増大度の下限を与え,またレゾルベントのスペクトル極限の存在(極限吸収原理)を証明する.考えるエンド付多様体のクラスはEuclid空間,双曲空間を摂動したものやそれらの半空間を含むが,一般に双曲空間上の場合,これらの議論によく用いられるMourre交換子の方法はそのままでは適用困難になることが知られている.ここでは対応する古典力学をよく観察することで,同手法におけるconjugate operatorに適切な修正を加え,さらにそこに生じる他の困難に,エネルギー局所化に代わる新たな工夫を施す.本講演はErik Skibsted氏(Aarhus大学)との共同研究に基づく.


第119回解析セミナー
日時 6月21日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 新國 裕昭 氏(前橋工科大学)
題目 一般退化ジグザグナノチューブ上の周期的シュレディンガー作用素のスペクトルについて
要旨
長さ1 の線分と長さ2 の円をひとつずつ交互につなげた周期的なグラフは退化ジグザグナノチューブと呼ばれる. 本講演では,これを一般化した,長さ1 の線分1 本と長さ2 の円のいくつかを周期的につなげたグラフを一般退化ジグザグナノチューブと呼ぶことし,そのグラフ上の周期ポテンシャルに従うシュレディンガー作用素のスペクトルについて調べる(接続条件はキルヒホッフの接続条件を考える).得られた結果は,基本周期内に,線分が1 本,円が2 つある場合のものである.この場合,グラフの構造と,そのグラフ上の周期的シュレディンガー作用素のスペクトラルギャップの退化・非退化に関する決定的な性質が完全に対応していることを見ることができる.一般に,1 次元のモデルであるHill 作用素に対してはすべてのスペクトラルギャップに退化の可能性があるが,数直線を切り離し,円を追加するごとに,どんな実数値2 乗可積分なポテンシャルに対しても退化しないスペクトラルギャップが周期的に増えていくことが,現段階では2 個の円の場合まで数学的に確認できるという結果を紹介する.


第118回解析セミナー
日時 5月31日(土) 15:00〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 千原 浩之 氏(筑波大学)
題目 Fourth order dispersive systems and dispersive flows into Riemann surfaces
要旨
円上のある4階線型分散型偏微分方程式系の初期値問題を考察する。リーマン面上の閉曲線運動を記述する分散型写像流を念頭に置いている。まず、この初期値問題が適切となるための必要十分条件を与える。次に、この結果をふまえて分散型写像流の方程式の構造を考察し、初期値問題が解けるためにはリーマン面が定曲率であることが「ほぼ必要である」ということを説明する。


第117回解析セミナー
日時 5月24日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 小川 卓克 氏 (東北大学)
題目 放物型方程式の初期値問題の端点最大正則性について
要旨
熱方程式の最大正則性は基礎Banach空間XにたいしてLr(0,T;X)において議論され, XがUMDである場合に, 時間Lebesgue指数 rが端点で無ければ, その成立のための必要十分条件が一般論により得られているが, Xが非回帰的Banach空間の場合にはその成否は各論によるところとなる. 特に時間Lebesgue 指数が端点の1である場合に, XがLebesgue空間Lpにおいては最大正則性は期待できない. Danchinは熱方程式に対して時間L1における最大正則性を斉次Besov空間を基礎として巧妙な手法で示したが,ここではその一般化と最適性を論ずる. 特に変数係数の熱方程式の最大正則性の最適性を議論し, Xが一般のLp空間では最大正則性が破綻することを示す. (清水扇丈氏との共同研究)


第116回解析セミナー
日時 5月24日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 黒木場 正城 氏 (室蘭工業大学)
題目 空間3次元 drift-diffusion system の初期値問題に対する有限時間爆発解について
要旨
走化性生物モデルであるNagaiモデルや重力場粒子モデルのdrift-diffusion方程式系は,空間2次元有界領域の初期値-境界値問題として,L1空間に含まれるL2空間のフレームワークで時間大域解と有限時間爆発解の構造について多くの議論がなされてきた.そこで前研究ではKurokiba-Ogawa(2003)の結果を発展させ,空間2次元多種粒子drift-diffusion方程式系の初期値問題に対する時間局所可解性と有限時間爆発解の存在について取り組んだ. 本研究では,P.Biler(1995)のエントロピー評価を使った空間n次元(n>2)drift-diffusion方程式系の初期値-境界値問題の爆発解に関する研究に着目し,Shannon-Fisherの不等式から今回得られたエントロピー評価と2次モーメント不等式を使って,空間3次元多種粒子drift-diffusion方程式系初期値問題に対する有限時間爆発解の条件について報告する.(本研究は小川卓克氏(東北大理)との共同研究)


第115回解析セミナー
日時 4月25日(金) 16:30〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 松浦 真也 氏(愛媛大学)
題目 ラメ曲線およびギーリス曲線の漸近的挙動
要旨
北欧デザインに用いられているラメ曲線(スーパー楕円)およびそれを拡張したギーリス曲線について解説する。 ラメ曲線は、20世紀半ばより、広くデザインに利用されてきたが、厳密な数学的解析はあまりなされていない。 一方、ギーリス曲線は20世紀末に提案されたもので歴史が浅い上、 先行研究は数値的手法によるものが主流で、 解析的な性質はほとんど調べられていない。 本講演では、ラメ曲線の指数パラメータを無限大に飛ばしたときの、最大曲率の漸近的挙動について、 詳述する。さらに、ギーリス曲線に対し、指数無限大の極限図形についても考察する。


第114回解析セミナー
日時 4月25日(金) 15:00〜
場所 愛媛大学 理学部数学棟2階大演習室
講師 松岡 千博 氏(愛媛大学)
題目 界面の非線形ダイナミクス
要旨
表面張力と重力が入った場合の非粘性・非圧縮流体の界面の非線形発展を数理的に解析する。 界面を挟んで流体の密度が異なり、上側の流体が軽く、かつ表面張力が考慮されているとき、 一般に界面は安定で、生じる波は表面張力波と呼ばれる。 また、上側の流体が重く、重力が考慮されているとき、界面は不安定で、 レーリーテーラー不安定性と呼ばれる界面不安定が生じる。 表面張力と重力がともに存在している場合には、前者(後者)の場合に不安定(安定)になることが線形安定性解析から容易に示せるが、 非線形領域で界面がどのようになるかはあまり知られていない。 本講演では弱非線形安定性解析を行って、 振幅方程式を導くとともに、スペクトル精度(空間差分による誤差ゼロ計算)による支配方程式の数値計算を行って、 これらの界面の非線形領域における形状を詳細に議論する。


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