2011年度のセミナー
第92回解析セミナー
日時 | 1月21日(土) 16:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 三沢 正史 氏(熊本大学・大学院自然科学研究科) |
題目 | p調和型非線形放物型方程式系に対するヘルダー評価とその幾何学的偏微分方程式への応用 |
要旨 | p調和型非線形放物型方程式系の正則性評価を考察する. Di Benedettoらの基本的な結果がある一方で, 係数, 外力、低階項の正則性と解のそれとの関係は不明瞭であった. 外力の最良と思われる可積分条件のもと解のヘルダー評価を証明する. 通常の放物型方程式系に対する古典的結果も含まれている. このヘルダー評価の応用として, 幾何学に現れるp調和写像流の部分的正則性条件を幾何学的に自然なスケールエネルギーによって与える. |
第91回解析セミナー
日時 | 1月21日(土) 14:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 赤木 剛朗 氏(神戸大学・システム情報学研究科) |
題目 | Symmetry and stability of asymptotic profiles for fast diffusion |
要旨 | N 次元有界領域における Fast diffusion 方程式の Cauchy-Dirichlet 問題について考える. このような問題では, 解が有限時間で消滅することが知られており, またその消滅レートや消滅解の漸近形も明らかになっている. 本講演では消滅解の漸近形の安定性に注目する. 前半では, はじめに Fast diffusion 方程式の漸近形に関する既存の結果の紹介を行う. 次に, 漸近形の安定性・不安定性の定義を与える. さらに漸近形の安定性・不安定性の判定条件を与える. 判定条件の導出には, 全ての漸近形が解となる Emden-Fowler 型方程式に対する変分解析, および, ある超曲面上の無限次元力学系の解析が重要な役割を担う. 後半では, 前半で与えた判定条件から外れてしまうケースについて議論する. 特にアニュラス領域における正値球対称な漸近形の安定性解析を行う. さらにここで行った漸近形の安定性解析の議論を応用して, Emden-Fower 型方程式の解の対称性・非対称性を調べる方法を提案する. 本講演は佐賀大学の 梶木屋 龍治 先生との共同研究に基づく. |
第90回解析セミナー
日時 | 12月3日(土) 15:30 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 久保 英夫 氏(東北大学・大学院情報科学研究科) |
題目 | 空間2次元における非線型波動方程式に対する外部問題の大域可解性 |
要旨 | 空間2次元における非線型波動方程式の外部問題について考察する. 波動方程式の解の時間減衰率は次元が下がるとともに悪くなる上, 偶数次元ではホイヘンスの原理も成り立たないため, 空間2次元の場合には初期値問題においても特有の難しさがある. 外部問題の解に対して時間減衰評価を導く標準的な手法として, カットオフ法と局所エネルギー減衰評価を組み合わせるというものがある. ここでも,空間2次元特有の困難があり, 初期値問題の解と同様の時間減衰率を導出するのは容易ではない. この困難を解消するため,ディリクレ境界条件と相性の良い時間微分に着目し, 少なくも局所的には初期値問題の解と類似の減衰評価を導くことができた. これにより,障害物が非捕捉的であるという仮定の下, 零構造を有する三次の非線型項を持つ波動方程式に対する外部問題が, 十分小さな初期値に対して時間大域解を許すことが示される. |
第89回解析セミナー
日時 | 12月3日(土) 13:30 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 清水 翔之 氏(東北大学・大学院情報科学研究科) |
題目 | Spectral properties of Hamiltonians for infinitely many boson systems |
要旨 | 非相対論的なボソン粒子の多体問題を考える。 粒子の個数が有限の時には系の時間発展はシュレーディンガー方程式で記述され、 散乱理論の漸近完全性や放射条件等、非常に深い解析がなされている。 多体シュレーディンガー作用素で培われた手法を用いて、 粒子数が「無限個」ある系の時刻無限大での挙動を調べるのが本講演での目標である。 系の状態空間はフォック空間と呼ばれるヒルベルト空間であり、 ハミルトニアンはそこで働く自己共役作用素として表される。 このハミルトニアンは通常の多体シュレーディンガー作用素の無限直和であり、 非常に簡明な形をしているが摂動項は非摂動ハミルトニアンに対して相対有界ではない。 本講演ではHigher−order estimates と呼ばれる手法を用いる事でこの問題点を克服し、 Mourreの不等式や波動作用素の存在等得られた結果についてお話したい。 |
第88回解析セミナー
日時 | 11月11日(金) 16:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 足立 匡義 氏(神戸大学・大学院理学研究科) |
題目 | On Avron-Herbst type formula in crossed constant magnetic and time-dependent electric fields |
要旨 | 定磁場に直交する2次元平面内にある1体量子力学系を支配するHamiltonianは、 考えている粒子が荷電自由粒子である場合、Landau Hamiltonianと呼ばれ、 そのスペクトルは、Landau準位と呼ばれる多重度無限大の固有値だけからなることが知られている。 その平面に一様電場(時間に依存していてもよい)を印加すると、 荷電粒子のサイクロトロン運動の回転中心に、ドリフト運動が生じる。 このような系を支配するHamiltonianによって生成される時間発展作用素が、 Landau Hamiltonianによって生成される時間発展作用素と、 前述のドリフト運動を表現するユニタリー作用素との積で表されること(Avron-Herbst型の公式)を紹介するのが、 本講演の目的の一つである。 特に、平面内の定ベクトルをある振動数で回転させたものが印加電場として与えられたとき、 その振動数が0(定電場)、あるいはサイクロトロン振動数である場合には、 中心力ポテンシャルによる散乱問題は考えるに値するものになることが、 このAvron-Herbst型の公式によって示唆される。 そのことを、実際に波動作用素の存在を示すことによって見る。 本講演の内容は、川本昌紀氏(神戸大学)との共同研究に基づくものである。 |
第87回解析セミナー
日時 | 11月4日(金) 15:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 坂元 国望 氏(広島大学・大学院理学研究科) |
題目 | 多成分系における Turing 不安定性 |
要旨 | 2成分反応拡散系におけるTuring 不安定性のメカニズムはよく知られているが、 成分数が3以上の反応拡散系におけるTuring 不安定性については、 個別の研究はあるものの、統一的な研究は殆ど無いのが現状であった。 最近、3成分反応拡散系におけるTuring 不安定化の機構を包括的に扱う事ができるようになったので、 その詳細について報告する。 要点は、3成分系を二つの部分系のペア(3ペアある)としてみることであり、 これら三つのペアの中で不安定な部分系の不安定性のタイプによって Turing 不安定性のタイプが決定できるという点である。 これによって、3成分反応拡散系のTuring 不安定化は完全に掌握される。 このような見方は、成分数が4以上の場合にも概念的には容易に拡張できるが、 現時点では技術的困難のため成分数が4以上の場合には決定的な結果はない。 |
第86回解析セミナー
日時 | 9月16日(金) 16:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 中安 淳 氏(東京大学・数理科学研究科) |
題目 | 距離空間上のアイコナール方程式 |
要旨 | アイコナール方程式は界面や波の伝播を考える際に基本になる方程式であり, しばしば粘性解と呼ばれる解のクラスで説明される. 近年この方程式の定義域を拡張する試みが行われてきたが, 本講演では一般の完備距離空間上のアイコナール方程式に対してmetric粘性解という新しい種類の粘性解を定義する. さらに比較定理や制御理論による解の構成,解の安定性といった従来の粘性解理論で成立する定理の多くがmetric粘性解でも成立することを紹介する. 本講演の内容は東京大学の儀我美一教授と浜向直氏との共同研究に基づく. |
第85回解析セミナー
日時 | 7月8日(金) 17:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 中野 史彦 氏(学習院大学・理学部) |
題目 | 1次元ランダムシュレーディンガー作用素の準位統計について |
要旨 | ランダムシュレーディンガー作用素のスペクトルの揺らぎを計算した結果について報告する。 主定理は小谷先生の結果の系として得られる。 |
第84回解析セミナー
日時 | 7月8日(金) 15:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 石田 敦英 氏(神戸大学・理学研究科) |
題目 | 定電場へと漸近する時間変動電場内での2体散乱問題 |
要旨 | Hamiltonianが時間に依存した場合の散乱問題については、 そのエネルギーの保存則の破れから困難な点が多く、 時間に依存していない系に比して考えている系独特の解析が必要となる。 本講演では、 ゼロでない定電場へと収束するような時間変動電場が外部に存在する下での2体問題について、 最近得られた結果について解説する。 電場の収束の速さに、ある意味で全エネルギーを有界に保つ閾値が存在し、 この値を境界としてポテンシャルによる力の大きさへの制限の有無を仮定することにより漸近完全性が導かれることを見る。 なお、本講演の内容は神戸大学の足立匡義先生との共同研究に基づく。 |
第83回解析セミナー
日時 | 7月1日(金) 16:30 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 山田 哲也 氏(広島大学・理学研究科) |
題目 | 空間1次元における走化性方程式の減衰解の最適な収束の速さ |
要旨 | 細胞性粘菌の集中現象を表す走化性モデルは移流拡散方程式系で記述される. 全空間における走化性モデルに関しては, 空間1次元の場合, 解は時間大域的に存在して有界であり, さらに時間無限大で熱核に漸近しながら0に収束することが知られている. 本講演では, 走化性方程式の有界な時間大域解の重心(center of mass)を考慮することと ある補正項を導入することによって既存研究で得られた収束の速さが改善され, その収束の速さは最適であることを報告する. |
第82回解析セミナー
日時 | 6月17日(金) 15:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 伊藤 宏 氏(愛媛大学・理工学研究科(工)) |
題目 | 遠方で発散するポテンシャルをもつ相対論的ハミルトニアンについて |
要旨 |
遠方で発散するポテンシャルをもつシュレーディンガー作用素とディラック作用素
はそのスペクトル構造が全く異なっているのにもわわらず,非相対論的極限(光速 c を
大きくする)においては密接な関係がある。この講演では,2種類の相対論的
シュレーディンガー作用素を介在させることで,これらの関係を明らかにしていく。
尚,主な内容は山田修宣氏(立命館大学)との共同研究である。
講演内容:V(x) は遠方で発散する解析的なポテンシャルとする。 1.量子力学にあらわれるハミルトニアンとスペクトルについて簡単に説明する。 2.(ある種の)解析的な作用素値関数の境界値として定義できる自己共役作用素の スペクトル構造を分類する。 3. V(x) および -V(x) をもつ2種類の相対論的シュレーディンガー作用素 のスペクトルを解析する。 4. V(x) をポテンシャルとしてもつディラック作用素のスペクトルとレゾナンスについて 非相対論的極限の観点で考察する。 |
第81回解析セミナー
日時 | 5月20日(金) 15:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 村川 秀樹 氏(九州大学大学院数理学研究院) |
題目 | 反応拡散系近似と急速反応極限 |
要旨 |
氷の融解・水の凝固の過程を記述するステファン問題, 地下水の流れを表す多孔質媒体流方程式,
2種生物種の競合問題における互いの動的な干渉作用を記述する重定-川崎-寺本交差拡散系など,
様々な問題を含む非線形拡散問題を取り扱う.
本講演では, 非線形拡散問題の解が, 拡散が線形である半線形反応拡散系の解により近似されることを示す.
この結果は, 非線形拡散問題の解構造が, ある種の半線形反応拡散系の中に再現されることを示唆するものである.
一般に, 非線形問題を扱うよりも半線形問題を取り扱う方が容易であるため,
本研究は非線形問題の解析や数値解析に応用できることが期待される. このような研究は反応拡散系近似と称される. 非線形問題の解を線形拡散項と非線形反応項から成る反応拡散系の解により近似する研究である. これに対して, 急速反応極限の問題は反応項を含む方程式系について, その反応率が大きくなったときの極限における解の振る舞いを調べる問題である. 研究の動機は異なるが,どちらも非線形問題と半線形反応拡散系との関係についての研究である. 時間が許せば急速反応極限の最近の話題についても触れたい. |
第80回解析セミナー
日時 | 4月22日(金) 15:00 〜 |
場所 | 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室 |
講師 | 門脇 光輝 氏 (愛媛大・理工学研究科) |
題目 | 3次元半空間の波動伝播と定常位相の方法について |
要旨 | 波動伝播に対するスペクトル密度関数の空間遠方での挙動(漸近展開)を得よう すれば、定常位相の方法を用いた議論が標準的であろう。しかし、伝播する空間が半 空間でその境界近傍の何らかの情報も得たい場合、通常の方法によってその情報を得 ることは容易なことではないと思われる。そこで講演では、適用対象は限定されるも のの、半空間版の定常位相の方法を整備し、その適用によって境界近傍の情報を得る ことが可能になったことをノイマン型境界条件付きの3次元弾性波のP-モード(P波入 射+P波反射+S波反射)に対する適用例を中心にして報告する。なお、本講演は筑波大 の磯崎洋氏と新潟大の渡辺道之氏との共同研究に基づいている。 |
これまでのセミナー
2010年度
2009年度
2008年度
2007年度
2006年度
2005年度
2004年度