2013年度のセミナー

第113回解析セミナー
日時 1月25日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学 工学部本館 11講義室
講師 磯崎 洋 氏(筑波大学)
題目 摂動された格子上のシュレーディンガー作用素のスペクトル理論
要旨
格子上のシュレーディンガー作用素のスペクトル理論は物理的に非常に重要であるがその数学的背景は未知の部分が多い。 本講演では格子上の逆散乱問題解決のために、 対応するハミルトニアンのスペクトル構造の解析、特にレゾルベント評価、スペクトル表示、ヘルムホルツ方程式の解空間、S行列を解説する。 正方、三角、六角、カゴメ、ダイアモンド、分割格子や、梯子型、グラフェン等の多くの例を含む理論である。 これは安藤和典氏、森岡悠氏との共同研究である。


第112回解析セミナー
日時 1月25日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学 工学部本館 11講義室
講師 平野 史朗 氏(筑波大学)
題目 2次元2層媒質中の動的破壊解析のための積分核
要旨
2次元波動方程式の Green 関数は波の到達時刻において -1/2乗の特異性を持ち、 これを積分核として、初期データとの畳み込み積分によって波動方程式の一般解を構成するが、 積分核が発散するために数値的取り扱いに不向きである。 更に線形弾性破壊力学においては、積分核の特異性が-5/2 乗となり益々困難が増す。 そこで部分積分を行なって積分核の特異性を数値的に取り扱い可能なまでに弱める工夫が要求される。 我々はこの部分積分を、波の伝播速度の不連続面を持つ2層媒質中における地震時の断層の動的破壊挙動解析のために行なう。 2層媒質の場合には Green 関数を求めるために Cagniard de-Hoop 法と呼ばれる解析的手法が知られており、 それによれば解はやや複雑な複素関数から成り、その部分積分の表現は未知であった。 我々はこの部分積分を複素変数の置換積分へと帰着し、積分核が複素変数の不完全楕円積分などで記述されることを示した。 本講演ではまず Cagniard de-Hoop 法について詳解した後、 2層媒質の場合の概要を述べ、 最後に破壊シミュレーションへの適用事例を紹介する。
References
De Hoop, 1960, "A modification of Cagniard's method for solving seismic pulse problems"
http://link.springer.com/article/10.1007%2FBF02920068
平野, 2013, "媒質境界に沿う, および媒質境界と交わる断層の動的破壊に関する理論的解析"
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/hirano/HiranoPhDThesis2013.pdf


第111回解析セミナー
日時 12月7日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学 工学部本館 11講義室
講師 乙部 厳己 氏(信州大学)
題目 確率偏微分方程式の定式化とその性質
要旨
確率偏微分方程式とは、 偏微分方程式に雑音項が付け加わったものをいう。 通常の偏微分方程式は理想化された現象を記述している場合が多く、 雑音項を付加した場合にどのような差が現れるかを知ることは現象を理解するためにも大切なことであると考えられる。 一方で自然でかつ数学的にも意義ある雑音項は超関数値の確率過程として記述され、 それを厳密に解析するためは予備知識も必要となる。 この講演では、まず雑音項の定式化、さらにその性質を述べ、 その伊藤積分が定義できること、特にL2関数上に定義された半群がそのような超関数値確率過程に対して作用できることを述べる。 この講演では特にそれらを関数解析的な観点に立って述べ、 いわゆる確率過程論の予備知識は仮定しない予定である。 その後、雑音がガウス型ではなく安定型と呼ばれる場合も含めて、 その解の性質、特に正則性の問題についての最近の結果を紹介する。


第110回解析セミナー
日時 12月7日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学 工学部本館 11講義室
講師 檀 裕也 氏(松山大学)
題目 Lieb-Thirring 不等式とその周辺
要旨
1976年に証明された Lieb-Thirring の不等式は、 Schr\"odinger 作用素に対する負の固有値に関する Riesz 平均について、 ポテンシャルの観点から評価を与えるものである。 電磁場によって記述される量子複雑系を解析する際、 その安定性を支持するとともに、 現実的なエネルギーの評価を知ることができる。 本講演において、 2011年に提案された Lumin と Solovej のアプローチに沿って Lieb-Thirring 不等式の証明を与えるとともに、 不等式における係数の精緻化に向けた新手法を提案したい。


第109回解析セミナー
日時 11月8日(金) 15:00〜
場所 愛媛大学 工学部講義棟 EL22講義室
講師 平山 浩之 氏(名古屋大学)
題目 Well-posedness and scattering for a system of quadratic derivative nonlinear Schr\"odinger equations at the scaling critical regularity
要旨
本講演では1階の微分を含む2次の非線型項を持つシュレディンガー方程式の連立系の初期値問題について考える. 単独の方程式の場合には非線型項における可微分性の損失のため, 一般には通常のソボレフ空間H^{s}における適切性を導くことはできない. しかし, 連立系でラプラシアンの係数がある条件を満たす場合には可微分性の損失を回復することができ, ソボレフ空間における適切性が得られることを示す. 特に高次元の場合には, フーリエ制限ノルムを精密化したU^2, V^2型のノルムを用いることにより, スケール臨界なソボレフ空間における適切性および解の散乱が得られることを示す.


第108回解析セミナー
日時 7月5日(金) 15:00〜
場所 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師 斎藤 隆泰 氏(群馬大学)
題目 波動解析と新しい時間領域境界要素法
要旨
本講演では、最新の時間領域境界要素法について紹介する。 従来の時間領域境界要素法は、時間増分が小さい場合に数値解が不安定になること、 大規模問題の解析が難しいこと、 解くべき問題に対する時間領域基本解が求まらない場合は解析が難しい等の欠点があることで知られている。 しなしながら、近年これらの欠点を改善するために、 高速多重極法(FMM:Fast multipole method)や演算子積分法(CQM:Convolution quadrature method) を取り入れた新しい時間領域境界要素法が開発され、工学上重要な様々な問題に適用されてきた。 本講演では、その新しい時間領域境界要素法の基礎となる定式化や、 波動問題に対する数多くの適用例を紹介する。


第107回解析セミナー
日時 6月21日(金) 16:30〜
場所 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師 降旗 大介 氏(大阪大学)
題目 離散変分導関数法およびその線形化と,その解析にあらわれる離散的な関数不等式について
要旨
Cahn-Hilliard 方程式や非線形 Schroedinger 方程式,Korteweg de Vries 方程式などの偏微分方程式ではその非線形性が解の性質に本質的に影響を与える. そのため,こうした問題ではしばしば数値解析に困難が伴う. これに対し,方程式の変分構造が保存量ないしは散逸量の存在を本質的に記述することに着目し, 変分構造を離散化することで数値計算スキームを導出するのが離散変分導関数法である. この際,極限をもたない離散の世界の特徴を生かして線形スキームを導出することも可能である. 連続と離散の関係が垣間見えるこの枠組みについて説明を試みる. また,こうしたスキームの数値解の解析には関数解析の結果の離散版にあたる定理などが用いられる. こうした結果についても紹介を行ない,できれば関数解析の専門家からの御意見をいただければと思う.


第106回解析セミナー
日時 6月7日(金) 15:00〜
場所 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師 上田 好寛 氏(神戸大学)
題目 Dissipative structure of the regularity-loss type and the asymptotic stability for the Euler-Maxwell system
要旨
本講演では,プラズマ現象を記述するEuler-Maxwell方程式系について考察する. 本方程式系は緩和項を持つ双曲型方程式系で記述されるが, 線形化方程式系に現れる緩和行列が対称行列ではないため, 静田・川島(Hokkaido Math. J., 14(1985))によって導かれた安定性理論を適用することができない. そこで,Euler-Maxwell方程式系を含むような方程式系にも適用される新たな安定性理論を構築することで, 安定性解析を試みる. また,時間があれば本方程式系の定常解に関する安定性解析についても言及したい. 本研究は,九州大学の川島秀一氏と,香港中文大学のRenjun Duan氏との共同研究である.


第105回解析セミナー
日時 5月25日(土) 15:30〜
場所 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師 池畠 優 氏(広島大学)
題目 The enclosure method for an inverse obstacle scattering problem with dynamical bistatic data over a finite time interval
要旨
This talk is concerned with an inverse obstacle problem which employs the dynamical scattering data of acoustic wave over a finite time interval. The unknown obstacle is assumed to be sound-soft one. The governing equation of the wave is given by the classical wave equation. The wave is generated by the initial data localized outside the obstacle and observed over a finite time interval at a generally different place from the support of the initial data. The observed data are the so-called bistatic data. In this talk, an enclosure method which employs the bistatic data is presented. The method is based on two main analytical formulae. The first one enables us to extract the maximum spheroid whose exterior encloses the unknown obstacle of general shape. The focal points of the spheroid are located at the center of the support of the initial data and that of the observation points. The second one, under some technical assumption for the obstacle including convexity as an example, indicates the deviation of the geometry of the boundary of the obstacle and the maximum spheroid at the contact points. Several implications of those two formulae are also given. In particular, a constructive proof of a uniqueness of a spherical obstacle using the bistatic data is given.


第104回解析セミナー
日時 5月25日(土) 13:30〜
場所 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師 和田出 秀光 氏(岐阜大学)
題目 臨界Sobolev-Lorentz-Zygmund空間上の2重対数型Hardyの不等式について
要旨
臨界Sobolev空間を特徴づける不等式の一つとして対数型Hardyの不等式が知られている。 本講演では、同不等式の臨界Sobolev-Lorentz空間上への一般化を試み、 不等式が成り立つための指数に関する必要十分条件を与える。 また、不等式に現れる対数の冪が臨界となるとき、重み関数が局所積分不可能となり、 対応する対数型Hardyの不等式は破綻する。 しかし、この場合、扱う関数を臨界Sobolev-Lorentz-Zygmund空間に置き換えることにより、 2重対数型Hardyの不等式が成立することを述べる。 また、2重対数型Hardyの不等式に対しても、 不等式が成立するための指数に関する必要十分条件を与える。


第103回解析セミナー
日時 4月26日(金) 15:00〜
場所 愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師 猪奥 倫左 氏(愛媛大学)
題目 スケール不変性を持つ臨界Hardyの不等式と最小化元の非存在
要旨
本講演ではスケール不変性を持つ臨界Hardyの不等式について考える. 既存の臨界Hardyの不等式はrearrangement invariant 空間の枠組みで最良な埋め込みを与えることが知られているが, 対数補正項の形に起因してスケール不変性を持たない. 本講演では対数補正項内に現れる定数項を修正することで, スケール不変性を持つ臨界Hardyの不等式を示し, さらにその最小化元が存在しないことについて述べる.


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