2022年度のセミナー


第209回解析セミナー
日時 1月20日(金) 15:30〜17:00
場所 愛媛大学 工学部5号館7階 E571
講師 伊藤 健一(東京大学)
題目 Strong radiation bounds for long-range perturbations
要旨
長距離型摂動を持つSchr\"odinger作用素のレゾルベントに対し,強型の放射評価を論じる.放射評価はレゾルベントの無限遠方での振動の様子を記述しており,これを利用することで,考えているSchr\"odinger作用素を対角化するような「一般化Fourier変換」を構成できる.強型の評価は,その構成の簡略化に寄与する.本研究で得られた強型放射評価は,Isozaki (1980) の評価より強く,また,Herbst-Skibsted (1991) の強型評価よりも摂動に対する仮定が弱い.本研究での強型放射評価の証明には,交換子法を用いる.ここでは2階の微分作用素をconjugate operatorとして採用する.本講演はE. Skibsted氏(Aarhus大学)との共同研究に基づく.


第208回解析セミナー
日時 12月16日(金) 15:30〜17:00
場所 愛媛大学 工学部5号館7階 E571
講師 藤家 雪朗(立命館大学)
題目 Some quantum effects by crossings of classical trajectories in matrix Schrödinger operators
要旨
We study spectral and scattering problems in the semiclassical limit for Schrödinger operators with a matrix-valued potential. Interesting phenomena in the asymptotic distribution of eigenvalues and resonances occur for such operators when the underlying classical Hamiltonians have crossing trajectories in the phase space. In this talk, we pick up some simple models in one dimension and see how the microlocal structure of solutions at crossing points determines the eigenvalue and resonance asymptotics.


第207回解析セミナー
日時 12月9日(金) 15:30〜17:00
場所 愛媛大学 工学部5号館7階 E571
講師 中西 敏浩(島根大学)
題目 2つ穴あきトーラスのタイヒミュラー空間とクライン群
要旨
SL(2,C)の離散部分群をクライン群という。本講演ではクライン群論の基本事項を概説した後,2つ穴あきトーラス群のSL(2,C)表現を具体的に求め,それに付随して得られるクライン群の例をいくつか紹介する。


第206回解析セミナー
日時 7月20日(水) 15:30〜17:00
場所 愛媛大学 理学部2号館2階 大演習室(201号室)
講師 榊原 航也 (岡山理科大学)
題目 基本解近似解法による極小曲面の数値計算
要旨
空間内に1つのJordan曲線が与えられた時,それを張る極小曲面(表面積極小の曲面)を求める問題は Plateau 問題として知られ,数学的にも数値的にも興味深い研究対象として長い歴史を持つ.本講演では,ポテンシャル問題に対するメッシュフリー数値解法として知られる基本解近似解法(代用電荷法)に基づいた,極小曲面の滑らかな数値計算アルゴリズムを提案する.特に,近似点の数を増やした時に求めたい極小曲面に収束することを数学的に証明し,複数の数値例を提示する.本講演の内容は,清水雄貴氏(東京大学)との共同研究に基づくものである.


第205回解析セミナー
日時 7月20日(水) 15:30〜17:00
場所 愛媛大学工学部5号館3階 E531
講師 中橋 渉 (東京理科大学)
題目 空間3次元上の優2次ポテンシャル付きシュレーディンガー方程式における 基本解の非正則性について
要旨
 空間3次元上の優2次ポテンシャル付きシュレーディンガー方程式の基本解の非正則性について考察する. 空間1次元では, K. Yajima(1996)によってシュレーディンガー作用素の固有値,固有関数の評価を用いて基本解の非正則性が示されている. しかし,空間多次元では固有値が単純であるとは限らないため,固有関数の扱いが複雑であり,一般には先ほどの手法を用いることが難しい. 本講演では,ポテンシャルに球対称性を仮定した場合,空間1次元の手法を用いて基本解の非正則性が得られることを紹介する. なお,本講演内容は,加藤圭一氏(東京理科大学)との共同研究に基づく.


第204回解析セミナー
日時 6月24日(金) 15:30〜17:00
場所 愛媛大学工学部5号館3階 E531
講師 渡部 拓也 (立命館大学)
題目 小さなギャップをもつ擬交差間の非断熱遷移問題に対する準古典解析
要旨
 本講演では,量子ダイナミクスに現れる2準位エネルギーの擬交差間における遷移確率の断熱極限について考察する. この問題は,2つの小さなパラメータを含む1階の連立常微分方程式系の解の接続に関する漸近解析である. 2つのパラメータのうちの1つである断熱パラメータは,準古典パラメータに相当するもので,この問題に準古典解析によるアプローチを試みるというのが本研究の主眼である. 擬交差の局所的な性質がどのように遷移確率の断熱極限に寄与するかという問いについては,完全WKB法により一定の解決が得られているものの,擬交差のギャップをもう1つのパラメータとして考慮すると,変わり点の合流を背景とする未解決部分が残っている. 講演では上記について概説し,時間が許せば退化した擬交差モデルについてのアプローチに触れたい.


第203回解析セミナー
日時 6月10日(金) 13:30〜15:00
場所 Zoom によるオンラインミーティング
講師 熊ノ郷 直人 (工学院大学)
題目 一般的な被積分汎関数をもつ高階放物型の相空間経路積分について
要旨
 ユークリッド空間上の高階放物型方程式に対応する相空間経路積分と, トーラス上の高階放物型方程式に対応する相空間経路積分について解説する. より正確には, ユークリッド空間上とトーラス上において, 高階放物型方程式に対応する相空間経路積分が数学的に厳密な意味を持つ一般的な汎関数の2つの集合を与える. それぞれの集合に属する任意の汎関数に対し, その汎関数を振幅としてもつ相空間経路積分の時間分割近似法は, 位置経路の終点と運動量経路の始点の関数として広義一様収束する. また, 汎関数のそれぞれの集合は, 基本的な汎関数を含み, 和や積, 経路の平行移動や線形変換, 汎関数微分などの演算に関して閉じている. したがって, 相空間経路積分可能な汎関数を多数生成することができる. 相空間の場合, 不確定性原理があるため, 使用の際, どの性質が有効かに注意する必要があるが, この相空間経路積分において, 積分や極限との順序交換, 経路の平行移動や直交変換に関する自然な性質, 汎関数微分の部分積分など, 標準的な積分の性質に類似した, いくつかの性質が有効である.


第202回解析セミナー(愛媛大学談話会との共催)
日時 5月20日(金) 16:45〜17:45
場所 愛媛大学理学部2号館2階 S24
講師 寺本 有花 (愛媛大学)
題目 Hopf bifurcation in artificial compressible system for doubly diffusive convection
要旨
 有界領域上における非圧縮Navier-Stokes方程式と人工圧縮方程式系の分岐問題について 考察する.人工圧縮方程式系は数値計算においてしばしば用いられる非圧縮Navier-Stokes 方程式の近似方程式である.人工圧縮方程式系に含まれるマッハ数をゼロとすると非圧縮 Navier-Stokes方程式が得られるが,これは特異極限であるため,解の分岐・安定性構造が似 通ったものになると簡単には結論できない.本講演では,主に人工圧縮方程式系のHopf分岐問 題を考察し,ある場合にはマッハ数が十分小さければ時間周期解の分岐・安定性が人工圧縮 方程式系と非圧縮Navier-Stokes方程式系とで同じになるという結果を紹介する.


第201回解析セミナー(愛媛大学談話会との共催)
日時 5月20日(金) 15:30〜16:30
場所 愛媛大学理学部2号館2階 S24
講師 樋口 健太 (愛媛大学)
題目 非捕捉的な古典軌道が生成する半古典量子共鳴
要旨
 シュレディンガー作用素は対応する古典力学における非捕捉的な(古典的粒子が時間無限大 において必ず遠方へと散逸する)実エネルギーの(半古典)近傍に共鳴をもたないことが知られている.特にポテンシャルが滑らかな場合には,半古典パラメータ h↓0 の極限において虚部の大きさが h log(1/h) 以下のオーダーとなるような共鳴は存在しない(Martinez (2002)).
 本研究では,行列値(ポテンシャルをもつシュレディンガー)作用素はこの範囲にも共鳴をもち得ることが明らかになった.行列値作用素では,固有ポテンシャル(行列値ポテンシャルの固有値)に関する(スカラー値)シュレディンガー作用素にそれぞれ古典力学が対応する.これらの古典力学に共通して非捕捉的であるようなエネルギーの近傍であっても,古典軌道が互いに交差することによって「閉軌道」をつくる場合には虚部が -Mh log(1/h)の共鳴が存在することがわかった.この係数Mは,古典的粒子が「閉軌道」を周回するために要する時間と交差の幾何学的な条件により決定される.



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