第37回 解析セミナー

最終更新日: 2007年4月10日

日時:  5 月 11 日(金) 15:00 〜
場所:  愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師:  久保 英夫 氏(大阪大学・理学研究科)
題目:  非線型波動方程式の外部問題について
要旨:   本講演の内容は片山聡一郎氏 (和歌山大学) との共同研究に基づくものです.
 抽象的な発展方程式の枠組から,その対象を非線型波動方程式に特化することにより,解の大きさに制限はあるものの,F. John がその大域的な性質を詳しく解析する道を拓いたのは1970年代に遡る.そこには非線型効果があっても尚,解の主要部は(自由解同様)特性曲線に沿って伝播するはずであるという思想がうかがえる.その事実を数学的に表現する為の一つの手段として S. Klainerman によって導入されたベクトル場法は,これまで初期値問題を扱う際に中心的な役割を果たしてきた.特に,臨界指数の非線型項に現れる零形式の処理に極めて有効であった.
 今回我々は,光錐に接する方向の微分に対する各点評価が一般の方向の微分に対するものよりも著しく改善されることを見出した.この事実は解の主要部が特性曲線に沿って伝播することの裏返しとも言える.これにより,Klainerman のベクトル場を全て用いることなく零形式を扱えるようになり,時空微分及び角微分のみを使うという新しい観点から,初期値問題に関する既存の結果に別証明を与えることが可能となった.更に,この考え方を外部問題に応用することによって,C. Sogge を中心とするグループによる一連の先行研究に新しい証明を与える事が出来たので,これについても紹介したい.