第32回 解析セミナー

最終更新日: 2006年10月18日

日時:  11 月 10 日(金) 15:00 〜
場所:  愛媛大学理学部数学棟2階 大演習室
講師:  小薗 英雄 氏(東北大学・理学研究科)
題目:  Stationary Navier-Stokes equations with the general flux condition
要旨:   本講演は柳澤卓氏(奈良女子大)との共同研究である.
 3 次元空間内の有界領域においてその境界が有限個の滑らかな曲面の連結成分からなる場合に,定常ナビエ・ストークス方程式の境界値問題の可解性について論じる.これまでは与えられた境界値の各連結成分における流量がゼロであれば,可解であることが知られていた.一方,非圧縮性条件からは各連結成分における流量の”総和がゼロ”というより緩和された条件下での解の存在が期待される.後者は”Lerayの問題”と呼ばれ,一般的な非斉次境界条件下での定常ナビエ・ストークス方程式の可解性に関する70年間に渡る難題である.実際,Leray は前者の各連結成分の流量がゼロの場合に,与えられた境界値を領域の内部にベクトポテンシャルを持つベクトル場として拡張した.このような拡張は,非斉次境界値条件に付随して決定される方程式の線形化作用素の正定値性を保障する.その結果,Leray-Schauder の不動点定理の適用が可能となり,非線形の定常ナビエ・ストークス方程式の可解性が導ける.本講演では,まず最初に de Rham-Hodge-Kodaira によるベクトル場の分解定理を r-乗可積分空間に一般化し,とくに領域の境界において法線方向と平行である 3 次元調和ベクトル場の特徴付けを行う.応用として,与えられた境界値の流量と方程式の可解性のと関係を,領域の位相不変量の観点から論じることが可能となる.